産業廃棄物の中でも、特に危険性の高いものは「特別管理産業廃棄物」として厳しく規制されています。その中核をなすのが「特定有害産業廃棄物」です。
タイトルの「3つの違いが曖昧」「それぞれ、どこまでが該当するのか分からない」といった質問を受けることがあります。特別管理一般廃棄物・特別管理産業廃棄物・特定有害産業廃棄物の3つの言葉(用語)はよく似ており、わからなくて違いを聞かれることが多いのでまとめてみました。
この3つを大きくわけると、特別管理一般廃棄物と特別管理産業廃棄物に分かれて、さらに特別管理産業廃棄物の中に特定有害産業廃棄物があるという分類(構造)になっています。特定有害産業廃棄物は特別管理産業廃棄物の一部です。
それでは、廃棄物処理法(正式名称:廃棄物の処理及び清掃に関する法律)・廃棄物処理法施行令に基づいて、定義・判定基準・種類・排出業種・リサイクル・自治体での差などを詳しく解説します。
特別管理産業廃棄物とは
特別管理産業廃棄物とは、爆発性、毒性、感染性、その他、人の健康、または生活環境に被害を生ずるおそれがある性状を有する産業廃棄物とされています。つまり、通常の産業廃棄物よりも危険性が高くて、特別な管理が必要な廃棄物ということです。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律からの引用です。
(定義)
第二条 この法律において「廃棄物」とは、ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物又は不要物であつて、固形状又は液状のもの(放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く。)をいう。5 この法律において「特別管理産業廃棄物」とは、産業廃棄物のうち、爆発性、毒性、感染性その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある性状を有するものとして政令で定めるものをいう。
このように通常の産業廃棄物よりも厳しい処理基準が設けられており、排出から最終処分まで徹底した管理が義務付けられています。
特別管理一般廃棄物
特別管理一般廃棄物は、あくまで一般廃棄物ですが、このような分類になります。
・PCB使用部品:廃エアコン・廃テレビ・廃電子レンジに含まれるPCBを使用する部品
・廃水銀:水銀使用製品が一般廃棄物となったものから回収した廃水銀
・ばいじん:ごみ処理施設の集じん施設で生じたばいじん
・ばいじん、燃え殻、汚泥:ダイオキシン特措法の特定施設である廃棄物焼却炉から生じたもので、ダイオキシン類を3ng/gを超えて含有するもの
・感染性一般廃棄物:医療機関等から排出される一般廃棄物であって、感染性病原体が含まれ若しくは付着しているおそれのあるもの
このように一般廃棄物の中でも、医療機関の血液付着ガーゼ(感染性)や、家電から出るPCB使用部品などが該当しており、通常の廃棄物より厳格な管理基準(専用容器、収集・運搬の記録など)が義務付けられています。
特別管理産業廃棄物の種類
廃棄物処理法施行令 第2条の4により、産業廃棄物として、主に次のように分類されています。特別管理一般廃棄物との違いは、名前のとおり、産業廃棄物である点です。
特別管理産業廃棄物
- 法律での特別管理産業廃棄物は次のとおりです。
- 性状によるもの
- 引火性廃油(引火点70℃未満)
- 腐食性廃酸(pH2以下)
- 腐食性廃アルカリ(pH12.5以上)
- 感染性産業廃棄物
これらは「危険な性質(性状)」によって特別管理に該当します。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行令からの引用です。
(特別管理産業廃棄物)
第二条の四 法第二条第五項(ダイオキシン類対策特別措置法第二十四条第二項の規定により読み替えて適用する場合を含む。)の政令で定める産業廃棄物は、次のとおりとする。
一 廃油(燃焼しにくいものとして環境省令で定めるものを除く。)
二 廃酸(著しい腐食性を有するものとして環境省令で定める基準に適合するものに限る。)
三 廃アルカリ(著しい腐食性を有するものとして環境省令で定める基準に適合するものに限る。)
四 感染性産業廃棄物(別表第一の四の項の下欄に掲げる廃棄物(法第二条第四項第二号に掲げる廃棄物であるものに限る。)及び別表第二の下欄に掲げる廃棄物(国内において生じたものにあつては、同表の上欄に掲げる施設において生じたものに限る。)をいう。以下同じ。)
特定有害産業廃棄物
特定有害産業廃棄物は特別管理産業廃棄物の下位の分類となります。特定有害産業廃棄物は特別管理産業廃棄物の一部です。
特定有害産業廃棄物とは、環境省では次のとおりとなっています。
・廃PCB等:廃PCB及びPCBを含む廃油
・PCB汚染物:PCBが染みこんだ汚泥、PCBが塗布され、又は染みこんだ紙くず、PCBが染みこんだ木くず若しくは繊維くず、PCBが付着し、又は封入されたプラスチック類若しくは金属くず、PCBが付着した陶磁器くず若しくはがれき類
・PCB処理物:廃PCB等又はPCB汚染物を処分するために処理したものでPCBを含むもの
・廃水銀等:①特定の施設において生じた廃水銀等、②水銀若しくはその化合物が含まれている産業廃棄物又は水銀使用製品が産業廃棄物となったものから回収した廃水銀
・指定下水汚泥:下水道法施行令第13条の4の規定により指定された汚泥
・鉱さい:重金属等を一定濃度を超えて含むもの
・廃石綿等:石綿建材除去事業に係るもの又は大気汚染防止法の特定粉じん発生施設が設置されている事業場から生じたもので飛散するおそれのあるもの
・燃え殻:重金属等、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの
・ばいじん:重金属等、ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの
・廃油:有機塩素化合物等、ジオキサンを含むもの
・汚泥、廃酸又は廃アルカリ:重金属等、PCB、有機塩素化合物等、農薬等、1,4-ジオキサン、ダイオキシン類を一定濃度を超えて含むもの
(参照)廃棄物処理法施行令第1条、第2条の4

特定有害産業廃棄物とは
特定有害産業廃棄物とは、有害物質を一定濃度以上含む産業廃棄物を指します。
つまり、単なる「危険な性質」ではなく、数値基準(濃度基準)で判断される点が特徴です。
廃棄物処理法施行令 第2条の4第5号に細かく規定されています。
- 特定有害産業廃棄物の主な対象物は次のとおりです。
- 廃ポリ塩化ビフェニル
- ポリ塩化ビフェニル汚染物
- ポリ塩化ビフェニル処理物
- 廃水銀等
- 下水汚泥を処分するために処理したもの
- 廃石綿等
- ばいじん
- ダイオキシン含有ばいじん・燃え殻
- 廃溶剤
- 重金属含有汚泥(鉛・カドミウム等)
- 汚泥、廃酸又は廃アルカリ
特別管理産業廃棄物と特定有害産業廃棄物の違い
| 区分 | 特別管理産業廃棄物 | 特定有害産業廃棄物 |
|---|---|---|
| 位置づけ | 上位概念 | (←)その一部 |
| 判断基準 | 性状(爆発性・感染性など) | 有害物質の濃度 |
| 例 | 感染性廃棄物、引火性廃油 | PCB、水銀、ダイオキシン |
| 法令 | 法2条5項・施行令2条の4 | 同条の5号 |
特定有害産業廃棄物は、特別管理産業廃棄物の一部(サブカテゴリー)です。
特別管理一般廃棄物、特別管理産業廃棄物、特定有害産業廃棄物の違い
ここで全体をまとめておきます。特別管理一般廃棄物と特別管理産業廃棄物は一般廃棄物と産業廃棄物の違いがありますが、特定有害産業廃棄物は特別管理産業廃棄物の含まれており、特定有害産業廃棄物は特別管理産業廃棄物の一部です。
| 区分 | 特別管理一般廃棄物 | 特別管理産業廃棄物 | 特定有害産業廃棄物 |
|---|---|---|---|
| 所属 | 一般廃棄物 | 産業廃棄物 | 特別管理産業廃棄物の一部 |
| 判断軸 | 危険性(性状) | 危険性(性状) | 有害物質の濃度 |
| 代表例 | 家庭系感染性ごみ、焼却ばいじん | 感染性廃棄物、引火性廃油 | PCB、水銀、重金属、ダイオキシン |
| 管轄 | 市町村 | 都道府県 | 都道府県 |
| 処理責任 | 市町村 | 排出事業者 | 排出事業者 |
判定基準
廃棄物処理法施行規則 第1条の2などで有害物質ごとに溶出量基準が定められていますが、例えば、水銀:0.005mg/L 以上、カドミウム:0.09mg/L 以上などの基準を超えると、特定有害産業廃棄物に該当します。
判定には分析(溶出試験)が必要であり、中間処理後でも再判定が必要になります。委託契約時に該当性確認が重要です。
排出源と対象業種
主な排出業種
- 製造業では次の業種が該当することが多くなります。
- 化学工業
- 金属加工業
- 半導体製造業
重金属や有機溶剤系が多いです。
- 建設業では次の業種が該当することが多くなります。
- 解体工事(解体工事に伴う廃石綿等)
- 石綿除去工事
- 電気事業・設備業(古いトランスやコンデンサ(PCB含有))
アスベストやPCB機器関連が多いです。
医療機関では感染性廃棄物ということで病院や検査機関が該当します。
- 焼却施設・処理施設で該当するのは次のとおりです。
- 清掃工場
- 中間処理業者
ダイオキシン含有物が対象になることが多いです。
リサイクルと処理方法
特別管理産業廃棄物は、原則として無害化処理が前提です。廃酸・廃アルカリの中和による再利用や、廃溶剤の蒸留再生などが行われていますが、通常の廃棄物よりも高度な技術と許可を持った業者への委託が必要です。
- 特別管理産業廃棄物の主な処理方法は次のとおりです。
- 焼却(高温)
- 中和処理(酸・アルカリ)
- 不溶化処理(重金属)
- 溶融処理(アスベスト)
処理後に再資源化されるケースもあります。たとえば、スラグから路盤材などです。鉄鋼スラグは、鉄鉱石から鉄を製造する過程で副生する鉱滓(不純物)のことで、セメント原料、道路の路盤材、土木資材として100%近く再利用される環境に優しい資源です。
管理義務
排出事業者責任
ここは重要なところですが、排出事業者は、自らの責任において適正に処理しなければならないとされています。このことは、つまり、委託しても責任は消えないということで、最後まで責任がありますよ!という意味です。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律からの引用です。
(事業者の責務)
第三条 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。
2 事業者は、その事業活動に伴つて生じた廃棄物の再生利用等を行うことによりその減量に努めるとともに、物の製造、加工、販売等に際して、その製品、容器等が廃棄物となつた場合における処理の困難性についてあらかじめ自ら評価し、適正な処理が困難にならないような製品、容器等の開発を行うこと、その製品、容器等に係る廃棄物の適正な処理の方法についての情報を提供すること等により、その製品、容器等が廃棄物となつた場合においてその適正な処理が困難になることのないようにしなければならない。
許可業者に出したから問題なしということではなくて、違法になる可能性もあるということです。たとえば、情報不足などで不適正に処理されたとか、不法投棄されたとかの場合には排出事業者も責任追及されます(措置命令対象)。
委託基準(契約義務)
廃棄物処理法 第12条の2第6項に規定されていますが、委託する場合は、書面による委託契約が必須となります。
- 契約書に記載すべき事項は次のとおりです。
- 廃棄物の種類・性状
- 数量
- 収集運搬・処分の方法
- 委託先の許可番号
- 取扱上の注意(特別管理なので重要)
特別管理産業廃棄物管理責任者
事業活動に伴って特別管理産業廃棄物を生ずる事業場を設置している事業者は、特別管理産業廃棄物の処理に関する業務を適切に行わせるため、事業場ごとに要件を満たす者から「特別管理産業廃棄物管理責任者」を選任しなければなりません。事業場ごとに選任義務があります。
爆発性、毒性、感染性など人の健康や生活環境に被害を生ずる恐れのある「特別管理産業廃棄物」を排出する事業場ごとに設置が義務付けられた法に基づく管理責任者です。排出状況の把握、処理計画の立案、適切な保管や委託管理全般を行い、設置しない場合は30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
(省令第8条の17第1号参照)
特別管理産業廃棄物管理責任者の要件(感染性産業廃棄物)は次のとおりです。
・医師、歯科医師、薬剤師、獣医師、保健師、助産師、看護師、臨床検査技師、衛生検査技師又は歯科衛生士
・2年以上環境衛生指導員の職にあつた者
・大学、高等専門学校において医学、薬学、保健学、衛生学若しくは獣医学の課程を修めて卒業した者、又はこれと同等以上の知識を有すると認められる者
多量排出事業者による処理計画の作成及び報告
事業活動で多量の特別管理産業廃棄物(前年度の発生量が50トン以上)が出る事業場を設置している事業者は、特別管理産業廃棄物の処理計画(様式第2号の13)を作成して、当該年度の6月30日までに都道府県知事等(政令市の長)に提出しなければなりません。
また、計画の実施状況についても翌年度の6月30日までに都道府県知事等に報告する必要があります(様式第2号の14)。提出された計画及び実施状況の内容は、都道府県知事等により1年間公衆の縦覧に供されます。
自治体による違い
産業廃棄物法などの法律は全国共通ですが、実務においては差があります。
主な違いとしては、指導要領(ローカルルール)・届出様式・保管基準の運用・立入検査の頻度などがあります。
自治体によっては、特別管理産業廃棄物管理責任者の届出等を条例等で定めているところもありますので、詳細は事業場の所在する自治体の担当部局にお問い合わせください。必ず管轄自治体の要綱を確認することがたいせつです。
まとめとよくある間違い・注意点
特別管理産業廃棄物は危険性(性状)で規制されます。特定有害産業廃棄物というのは濃度基準で規制される特別管理産業廃棄物の一部のカテゴリーです。「性状」と「濃度」の両面で判断することが重要です。
事業活動から排出される廃棄物の中でも、爆発性や毒性、感染性などがあり、人の健康や生活環境に被害を生じる恐れがあるものは「特別管理産業廃棄物」として厳格に管理する必要があります。その中でも特に化学的な有害性を持つものが「特定有害産業廃棄物」です。
また、注意点としては、危険なら全部が特定有害となるわけではありません。数値基準を満たすものだけが特定有害となります。
中間処理すれば普通の廃棄物になるというのも違います。再判定が必要になります。
「委託すれば責任はない」というのも間違いです。排出事業者責任はそのまま残っています。



