FIT制度の太陽光発電所を家族へ引き継ぐには?相続・生前贈与・家族信託の違いを行政書士が解説

コラム

太陽光発電所を所有している方の中には、

  • 将来は子どもへ発電所を引き継ぎたい。
  • 相続が発生してから手続きを考えれば間に合うのだろうか。
  • 自分が認知症になった場合、発電事業はどうなるのだろうか。
  • 家族信託という方法を聞いたことがあるが、自分にも関係があるのだろうか。

と不安や疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

太陽光発電所は、土地や建物とは異なり、FIT制度に基づいて長期間にわたり売電事業を継続する事業用資産です。

そのため、家族へ引き継ぐ際には、

  • 財産をどのように承継するか
  • 発電事業をどのように継続するか
  • FIT制度上必要となる手続をどのように進めるか

という三つの視点から考えることが重要になります。

近年は認定事業者の高齢化が進み、

「子どもへ引き継ぎたい」
「認知症になる前に準備しておきたい」

というご相談も少なくありません。

家族へ引き継ぐ方法として代表的なのが、

  • 相続
  • 生前贈与
  • 家族信託

ですが、それぞれ目的や役割が異なります。

大切なのは、「どの制度が優れているか」ではなく、
「ご自身やご家族の状況に適した方法を選ぶこと」です。

この記事では、太陽光発電所の事業承継という視点から、それぞれの特徴や違い、FIT制度との関係について行政書士が分かりやすく解説します。

なぜ太陽光発電所は事業承継の準備が重要なのか

太陽光発電所は、一般的な相続財産とは異なり、長期間にわたり売電事業を継続することを前提とした事業用資産です。

そのため、家族へ引き継ぐ際には、

  • 財産を承継すること
  • 発電事業を継続すること
  • FIT制度上必要となる手続を行うこと

の三つを一体として考える必要があります。

例えば、認定事業者が高齢になった場合や、将来認知症などによって財産管理が難しくなった場合には、売電収入の管理や発電事業の運営について家族が対応しなければならない場面も考えられます。

そのため、

  • 誰が引き継ぐのか
  • いつ引き継ぐのか
  • どの方法で引き継ぐのか

を元気なうちから整理しておくことで、将来の選択肢を広げられる場合があります。

なお、どの方法を選択する場合であっても、FIT制度上必要となる手続については別途確認が必要です。

家族へ引き継ぐ代表的な三つの方法

太陽光発電所を家族へ引き継ぐ方法として代表的なのが、

  • 相続
  • 生前贈与
  • 家族信託

です。

これらは目的が異なる制度であり、
「どれが最も優れている」というものではありません。

重要なのは、「何を実現したいのか」という目的から考えることです。

相続

相続は、認定事業者が亡くなった後に、相続人が発電事業を承継する方法です。

最も一般的な承継方法ですが、相続手続と並行してFIT制度上の手続についても確認する必要があります。

生前贈与

生前贈与は、認定事業者が元気なうちに発電事業を家族へ引き継ぐ方法です。

承継の時期を自ら決められることが特徴であり、後継者が決まっている場合などに検討されます。

家族信託

家族信託は、財産を家族に託し、あらかじめ定めた目的に従って管理・承継していく仕組みです。

例えば、

  • 将来、認知症などによって自分で財産を管理することが難しくなった場合に備えたい。
  • 発電事業を中断させることなく家族へ管理を引き継ぎたい。

といった場合に検討されることがあります。

もっとも、家族信託はすべての方に適している制度ではありません。

家族構成、資産状況、承継方法などによって適した方法は異なるため、個別の事情に応じて検討することが重要です。

相続・生前贈与・家族信託の違い

それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。

比較項目相続生前贈与家族信託
承継する時期死亡後生前信託契約の内容による
主な目的財産の承継生前の事業承継財産管理と将来の承継
承継時期を決められるか×
将来の財産管理への備え○(契約内容による)
FIT制度上の手続必要必要内容に応じて確認が必要
※上記は一般的な特徴を整理したものであり、個別案件によって異なります。

重要なのは、

「どの制度が有利か」ではなく、
「ご自身が実現したいことに適した制度を選択すること」です。

例えば、

「現在は自分で発電事業を続けたい。」
という方と、

「将来の認知症に備えて、家族へ管理を任せられるようにしたい。」
という方では、検討すべき方法が異なります。

どのような方に向いているのか

一般的には、次のような考え方が参考になります。

相続を中心に考えるケース

  • 現在は自分で発電事業を継続したい
  • 将来的に相続による承継を予定している

生前贈与を検討するケース

  • 後継者が決まっている
  • 元気なうちに事業を引き継ぎたい
  • 計画的に世代交代を進めたい

家族信託を検討するケース

  • 将来の認知症などによる財産管理に備えたい
  • 発電事業を継続しながら管理体制を整えたい
  • 財産管理と承継を一体的に考えたい
  • 家族で事前に承継方法を話し合いたい

家族信託は、「相続の代わり」ではありません。
「将来の財産管理」や「事業運営」までを見据えた、
選択肢の一つとして検討される制度です。

そのため、

「家族信託が利用できるか」ではなく、
「家族信託を活用することが目的に合っているか」

という視点で検討することが重要です。

FIT制度で確認が必要となる事項

どの承継方法を選択する場合であっても、FIT制度上必要となる手続について確認する必要があります。

案件によって必要となる手続は異なり、

  • 変更認定申請
  • 事前変更届出
  • 事後変更届出

のいずれに該当するかは、変更内容ごとの変更手続整理表に基づいて判断します。

また、必要となる添付書類も変更内容によって異なります。

そのため、承継方法を決めてからFIT制度の手続を考えるのではなく、承継方法を検討する段階からFIT制度上必要となる手続についてもあわせて確認しておくことが重要です。

行政書士が確認する事項

太陽光発電所を家族へ引き継ぐ場合は、「相続」「生前贈与」「家族信託」のいずれを選択する場合であっても、承継方法だけを決めればよいわけではありません。

太陽光発電所は、一般的な不動産とは異なり、FIT制度に基づく認定を受けて継続的に売電事業を行う事業用資産です。

そのため、家族へ引き継ぐ際には、財産を承継するだけではなく、

  • FIT制度の認定内容
  • 売電事業を継続できる状態にあるか
  • 必要となる変更手続
  • 承継後も事業を継続できる資料がそろっているか

まで確認することが重要です。

行政書士は、承継方法に応じたFIT制度上の手続を整理するため、主に次の事項を確認します。

FIT・FIP制度に関する確認事項

  • 認定事業者
  • 事業者ID
  • 設備ID
  • FIT又はFIP区分
  • 認定年月日
  • 運転開始日
  • 調達期間又は交付期間
  • 現在の認定内容
  • 過去の変更認定・変更届出の履歴
  • 認定内容と設備の現況に相違がないか

発電設備・事業に関する確認事項

  • 太陽光パネルの更新履歴
  • パワーコンディショナの交換履歴
  • 廃棄費用積立制度の状況
  • 保守点検の状況
  • 接続契約の状況
  • 土地の所有権又は賃借権等の権原
  • 必要な許認可等の状況

承継方法に関する確認事項

  • 相続・生前贈与・家族信託のいずれを予定しているか
  • 承継後も売電事業を継続する予定か
  • 将来的に売却を予定しているか
  • 後継者が発電事業を引き継ぐ意思を有しているか
  • 必要となる変更認定又は変更届出
  • 添付書類

このように、行政書士は「名義を変更する手続」だけでなく、「発電事業を円滑に承継するための準備」まで含めて整理することが重要な役割となります。

認知症になる前に考えておきたいこと

家族信託が注目される理由の一つが、将来の財産管理への備えです。

太陽光発電所は、一度設置すれば終わる資産ではありません。

運転開始後も、

  • 売電事業の継続
  • 保守点検
  • パワーコンディショナ等の設備更新
  • 廃棄費用積立制度への対応
  • FIT制度上の各種変更手続

など、継続的な管理が必要になります。

そのため、認定事業者が高齢となり、
将来認知症などによって判断能力が低下した場合には

「誰が発電事業を管理するのか。」
「必要なFIT制度の手続を誰が進めるのか。」

という問題が生じる可能性があります。

家族信託は、このような将来の財産管理に備える方法の一つとして活用が検討される制度です。

もっとも、家族信託を利用すればすべての問題が解決するわけではありません。

FIT制度上必要となる変更認定申請や変更届出の要否は、
家族信託とは別に個別に確認する必要があります。

行政書士へ相談するメリット

太陽光発電所の承継では、

  • 相続
  • 生前贈与
  • 家族信託

のいずれを選択するかだけではなく、

「FIT制度ではどのような手続が必要になるのか」

を整理しなければなりません。

行政書士へ相談することで、

  • 承継方法に応じたFIT制度上の手続の整理
  • 必要書類の確認
  • 変更認定申請又は変更届出の要否の確認
  • 行政書士が作成できる申請書類の作成
  • 売電事業を継続するための資料整理

についてサポートを受けることができます。

また、家族信託や相続、税務、不動産登記など、行政書士だけでは対応できない事項については、必要に応じて司法書士、税理士、弁護士等と連携しながら進めることも重要です。

太陽光発電所の承継では、
「制度ごとに専門家へ相談する」のではなく、
「事業承継全体を見据えて相談する」ことが、円滑な承継につながります。

よくある質問

Q
家族へ引き継ぐなら、相続・生前贈与・家族信託のどれが一番よいですか
A

一概に「この方法が最適」とはいえません。

現在の年齢、ご家族の状況、発電事業をいつ引き継ぎたいか、将来の財産管理をどのように考えるかなどによって適した方法は異なります。

Q
家族信託を利用すれば、FIT制度の手続は不要になりますか
A

いいえ。
家族信託は財産管理・承継の方法の一つであり、FIT制度上必要となる変更認定申請や変更届出とは別に考える必要があります。

Q
認知症になってから家族信託を利用できますか
A

一般的に、家族信託は契約時に本人の意思能力が必要とされています。
そのため、認知症への備えとして検討する場合には、元気なうちから準備を始めることが重要です。

Q
家族信託を利用すると、発電事業も自動的に承継されますか
A

いいえ。

家族信託を利用した場合でも、FIT制度上必要となる手続が必要となる場合があります。

承継方法とFIT制度上の手続は、それぞれ確認することが重要です。

Q
将来的に売却する予定があります。その場合でも家族信託を検討できますか
A

将来の売却予定も含めて承継方法を検討することは可能です。

どの方法が適しているかは、事業計画やご家族の状況によって異なりますので、早い段階から専門家へ相談することをおすすめします。

Q
行政書士へ相談するタイミングはいつがよいですか
A

相続が発生してからではなく、「家族へ引き継ぎたい」と考え始めた段階で相談することをおすすめします。

承継方法を検討する初期段階からFIT制度上の手続も整理することで、将来の負担を軽減しやすくなります。

チェックリスト

承継方法を検討し始めたら、次の事項を確認してみましょう。

  • 誰へ発電事業を引き継ぐか決めている
  • 発電事業を継続するか売却するか家族で話し合った
  • 相続・生前贈与・家族信託の違いを理解した
  • 認定内容を確認した
  • 事業者ID・設備IDを確認した
  • 変更履歴を整理した
  • パワーコンディショナ等の更新履歴を確認した
  • 廃棄費用積立制度の状況を確認した
  • 土地や接続契約の資料を確認した
  • FIT制度上必要となる手続を確認した
  • 専門家へ相談することを検討している

まとめ

太陽光発電所を家族へ引き継ぐ方法には、相続、生前贈与、家族信託などがあります。

それぞれ目的や特徴が異なるため、「どの制度を利用するか」ではなく、「どのように発電事業を次世代へ引き継ぎたいのか」という視点で検討することが大切です。

また、太陽光発電所はFIT制度に基づいて長期間運営する事業用資産です。

そのため、財産を承継するだけではなく、認定内容や設備の状況、売電事業を継続するための資料、FIT制度上必要となる手続についても整理しておく必要があります。

承継方法を検討する際には、相続や家族信託だけでなく、FIT制度上必要となる手続まで含めて確認することが、円滑な事業承継につながります。

当事務所でサポートできること

当事務所では、太陽光発電所の承継に伴うFIT・FIP制度の各種手続について、必要書類の整理、変更認定申請、変更届出その他行政書士が取り扱うことができる業務をサポートしております。

また、承継方法をご検討中の段階から、認定内容や必要書類、事業承継全体を見据えたFIT制度上の手続を整理し、必要に応じて他士業と連携しながら円滑な承継を支援いたします。

太陽光発電所を次世代へ安心して引き継ぎたいとお考えの方は、お気軽にご相談ください。