建設業者や運送業者の中には、「特殊車両通行許可(特車許可)」を取得していれば問題ないと思われてる方も少なくないと思いますが、産業廃棄物の運搬を行う場合は、産業廃棄物収集運搬業許可が必要になる場合があります。
どのような場合に産廃許可が必要になるのか、特車許可との違い、トラブル事例、許可取得の要件と手続きについて、わかりやすく解説します。
特車許可と産廃許可の違い
両者はまったく別の許認可制度であって、代替関係にはありません。
特車許可(特殊車両通行許可)
道路法に基づく許可で、一般制限値(高さ・幅・重量)を超える車両や重機運搬車や大型資材運搬車などの車両に必要です。目的は道路の保全と安全確保です。
道路法からの引用です。
第四十七条 道路の構造を保全し、又は交通の危険を防止するため、道路との関係において必要とされる車両(人が乗車し、又は貨物が積載されている場合にあつてはその状態におけるものをいい、他の車両を牽けん引している場合にあつては当該牽けん引されている車両を含む。
産業廃棄物収集運搬業許可
廃棄物処理法に基づく許可で、事業活動に伴って発生した廃棄物(産業廃棄物)を運搬する場合に必要な許可です。目的は、環境保全と不法投棄防止です。
廃棄物処理法からの引用です。
(産業廃棄物処理業)
第十四条 産業廃棄物(特別管理産業廃棄物を除く。以下この条から第十四条の三の三まで、第十五条の四の二、第十五条の四の三第三項及び第十五条の四の四第三項において同じ。)の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあつては、産業廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその産業廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる産業廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
産廃許可が必要で特車許可だけでは違法になるケース
判断のポイントは、運ぶものが「産業廃棄物」に該当するのかどうか、産廃は自社のものか、他人(他社)のものかどうか、運搬が「事業」として行われているかという点です。
原則としては、他人(他社)の産業廃棄物を運ぶ場合は許可が必要です。
許可が不要な例外としては、自社で発生した産廃を自社で運搬する場合です。(自己運搬)
よくある産廃許可が必要であり、特車許可だけでは違法になるケースをご紹介します。
建設現場から残土・廃材を運搬
コンクリートガラ・アスファルト・建設汚泥などは「産業廃棄物」に該当します。元請けや他社の現場のものを運ぶ場合は産廃許可が必要です。
重機と一緒に廃材も運搬
特車許可車両であっても重機を運ぶのは問題ありませんが、廃材は「産廃扱い」となるため、無許可運搬となる可能性があります。
運送業者が産廃の配送を請け負う
ただの運搬であっても産廃は規制対象になっています。運送業許可とは別に産廃許可が必要です。
下請け業者の無許可運搬
元請けが、ついでに産廃を処分場まで運ぶ依頼をして下請けが特車許可あっても無許可運搬になります。重要なのは元請けも委託基準違反になる可能性があることです。
スクラップ業者への運搬
金属くずや廃プラスチックですが、有価物か産廃かの判断が曖昧です。形式上は産廃と判断されるケースがありますので注意が必要です。
基本的には売れるものだけ、有価物のみであれば、産廃許可は必要ではありませんが、産廃と有価物を混載などして運ぶ場合は、産廃許可は必要になります。
売りに行って、わずかでも引き取れない産廃相当の物がある可能性があるのであれば、産廃許可を取得しておいたほうがよいでしょう。
なお、有価物の譲渡では、産業廃棄物処理法に基づくマニフェスト(産業廃棄物管理票)のような書類も必要ありません。
ただし、運搬物の性質や取引相手、地域の条例によって判断が異なることがあるので、迷ったら行政書士 今井孝事務所に問い合わせて、ご相談してください。
東京都千代田区神田須田町 2-19-23
Daiwa秋葉原ビル 2F
リージャスビジネスセンター
行政書士 今井孝事務所
TEL: 03-6820-7434
偽装有価物
スクラップとして売却しているつもりでも、実態が「廃棄物の処理」に該当する場合は、「偽装有価物」と判断されることもあり、無許可での産業廃棄物処理として違法になる可能性があります。
たとえば、スクラップとして引き渡しているにもかかわらず、運搬費や処理費を支払っているケースです。実質的に「処分委託」とされる可能性があります。
市場価値が認められない場合では、継続的な需要がなく、再資源化が困難な状態のものは、有価物とは認められにくくなります。
また、不純物が多く再利用できない場合、木くず、プラスチック、土砂などが混入している場合は、スクラップとしての価値が否定される可能性もあります。
たとえ、形式上は売買契約でも、実際には処理費用の支払いが発生しているなど、実態が伴っていない場合も有価物でないと判断されることもあります。
解体現場の混合廃材を「スクラップ」としてまとめて持ち込み、実際には大部分が処分されている金属くずだけとして持ち込んだが、不純物が多く一部しか買い取られず、残りは処分扱いとなった場合などです。買取という名目で契約しているにもかかわらず、実際には運搬費や処分費を支払っているケースでは、運搬業者・排出事業者ともに、無許可営業や委託基準違反に問われる可能性があります。
混載運搬
建設資材と廃材を同時に積載する場合ですが、積載物の一部でも産廃なら規制対象になります。

産業廃棄物収集運搬業許可の要件
許可取得には以下の要件を満たす必要があります。
人的要件(講習会)
産廃講習会を修了していること(日本産業廃棈物処理振興センター)
経理的基礎
債務超過でないことや一定の財務安定性が必要になります。
欠格要件に該当しない
暴力団関係者でないことや廃棄物法違反歴がないなどです。
運搬施設
車両の保有(ダンプ、コンテナ等)や飛散・流出防止措置をしていることです。
保管場所
積替保管を行う場合は別途許可が必要になります。

産廃許可取得の流れと手続き
手続きの流れは次のとおりです。
- 講習会の受講・修了
- 必要書類の収集
- 申請書作成
- 収集・運搬する都道府県へ申請
- 審査(約1~3か月)
- 許可証交付
- 産廃許可の主な提出書類は次のとおりです。
- 産業廃棄物収集運搬業許可申請書(新規・更新・変更)
- 事業計画書(運搬先、積替え保管の有無など)
- 誓約書(欠格要件に該当しないことの証明)
- 定款の写し(法人のみ)
- 履歴事項全部証明書(法人のみ・3ヶ月以内)
- 住民票(本籍記載・役員全員分)
- 登記されていないことの証明書(成年被後見人等ではない証明)
- 講習会修了証の写し(新規申請・更新)
- 直近3年分の決算書(法人・赤字の場合は改善計画書が必要な場合も)
- 法人税(所得税)の納税証明書(直近3年分)
- 自動車検査証の写し(運搬車両分)
- 運搬車両・容器の写真(全体・側面社名・廃棄物容器)
- 駐車場の賃貸借契約書の写し(自己所有でない場合)
なお、産廃許可の範囲に注意が必要です。都道府県ごとに許可が必要になります。産業廃棄物収集運搬業の許可は、「運搬の起点(積む場所)」と「終点(降ろす場所)」の両方の都道府県で必要です。
また、積替保管の有無で区分があります。運搬途中で廃棄物を一時的に別の場所に降ろし、積替えることでが、許可証に「積替え、保管を含む」と記載された業者のみが実施できます。


