卒FITとは、FIT制度による固定価格での買取期間が満了することです。
しかし、固定価格での買取期間が終了したからといって、
太陽光発電設備について今後一切の変更手続がなくなるとは限りません。
再生可能エネルギー電子申請システムには、調達期間が終了した一定の認定設備について、「事前変更届出(卒FIT)」という手続が用意されています。
例えば、卒FIT後に太陽光発電設備の事業者が変わる場合などには、現在の認定状態や登録情報、変更内容を確認し、必要な手続を判断することになります。
この記事では、「事前変更届出(卒FIT)」とはどのような手続なのか、どのような項目を変更できるのか、手続前に何を確認すればよいのかを行政書士の視点から解説します。
卒FITとは?
卒FITとは、一般に「FIT制度による固定価格での買取期間が満了すること」をいいます。
住宅用太陽光発電では、固定価格での買取期間は10年間です。
ただし、卒FIT=太陽光発電設備そのものの終了ではありません。
卒FIT後も太陽光発電を続けることはでき、発電した電気を自家消費したり、
小売電気事業者等と契約して余剰電力を売電したりすることができます。
そして行政手続の面でも、「買取期間が終了したこと」と「設備に関するすべての手続が終了したこと」は同じではありません。
ここが、卒FIT後の手続を考えるうえで重要なポイントです。
事前変更届出(卒FIT)とは?
再生可能エネルギー電子申請システムには、「事前変更届出(卒FIT)」という手続が用意されています。
名称だけを見ると、「卒FITする前に提出する届出?」と思われるかもしれません。しかし、現在の電子申請システムでは、認定状態が「認定中(調達期間終了)」となっている設備について、「事前変更届出(卒FIT)」の手続を行うことができます。つまり、単に「これから卒FITすることを届け出る手続」という意味ではありません。
調達期間終了後の認定設備について、一定の登録情報を変更するために用意されている手続と考えると分かりやすいでしょう。
どの卒FIT設備でも手続できる?
卒FITしている設備であれば、すべて一律に事前変更届出(卒FIT)を行えるわけではありません。
現在の再生可能エネルギー電子申請システムでは、認定状態が「認定中(調達期間終了)」となっている設備について、事前変更届出(卒FIT)の手続を行うことができます。
したがって、実際の案件では「設置から10年以上経っているから卒FITだろう」というだけで判断するのではなく、
- 対象設備を特定する
- 現在の認定状態を確認する
- 現在登録されている情報を確認する
- 何を変更したいのか確認する
という順序で整理することが重要です。
事前変更届出(卒FIT)で変更できる主な項目
事前変更届出(卒FIT)では、複数の項目が変更対象となっています。
代表的なものとしては、次のような項目があります。
- 事業者情報
- 発電設備の出力
- 発電設備の設置場所に関する事項
- 太陽電池に関する事項
- 保守点検責任者・維持管理計画
- 売電契約先に関する事項
- 廃棄等費用に関する事項
特に、中古住宅の売買や相続・贈与などでは、事業者情報の変更が問題になることがあります。
一方で、設備の交換や設置状況の変更がある場合には、発電設備に関する項目も確認が必要です。
ただし、すべての設備について、すべての項目を自由に変更できるという意味ではありません。
設備の区分や現在の認定・登録状況、実際に変更する内容によって確認事項が異なるため、具体的な案件では対象設備ごとに判断する必要があります。
事業者が変わる場合はどうする?
卒FIT後の実務で特に重要なのが、事業者情報の変更です。
例えば、
- 太陽光付き中古住宅を売買した
- 家族へ太陽光設備を引き継いだ
- 相続によって承継する人が変わった
といった場合には、現在登録されている事業者情報を確認する必要があります。
現在の電子申請システムでは、事業者情報も変更対象となっており、新たな事業者を登録する手続も用意されています。
したがって、「卒FITしたから事業者情報はもう関係ない」とは考えず、所有者や事業者が変わる場合には、現在の認定・登録状況を確認することが重要です。
なお、売買・相続・贈与など、変更の原因によって確認事項や必要書類が異なる場合があります。
そのため、具体的な案件では変更原因まで確認したうえで手続を整理します。
中古住宅の売買で確認したいケース
事前変更届出(卒FIT)が実務上問題になりやすい場面の一つが、太陽光付き中古住宅の売買です。
例えば、
- 中古住宅を購入したら、屋根に太陽光発電設備が付いていた
- 確認するとすでに卒FITしていた
- 住宅の所有権移転は済んでいるが、太陽光の登録情報は売主のままだった
というケースです。
この場合、
不動産の所有権移転登記が完了したことと、
太陽光設備に関する行政手続が完了したことは分けて考える必要があります。
まず、
などを確認します。
そのうえで、事前変更届出(卒FIT)を含め、必要となる手続を判断します。
太陽光付き中古住宅の売買については、関連記事「太陽光付き中古住宅を売買したら?卒FIT後の名義変更とFIT制度の手続きを行政書士が解説」で詳しく解説しています。
相続・贈与で所有者が変わる場合は?
相続や贈与によって太陽光設備を家族へ引き継ぐ場合も、「卒FIT済みだから行政手続は何もない」と一律に判断しないことが重要です。
まず、
- 対象となる太陽光設備
- 現在の認定状態
- 現在登録されている事業者
- 誰が設備を承継するのか
- 土地・建物の権利関係
- 売電契約
などを整理します。
特に相続では「土地・建物の相続手続」と、「太陽光設備に関する行政手続」を分けて考える必要があります。
不動産登記については司法書士、税務については税理士、法律紛争については弁護士など、行政書士の業務範囲を超える事項については他士業との連携が必要になる場合があります。
通常の事前変更届出との違いは?
再生可能エネルギー電子申請システムには、「事前変更届出」と、「事前変更届出(卒FIT)」が別の手続として用意されています。
太陽光50kW未満の申請についても、
- 事前変更届出
- 事前変更届出(卒FIT)
- 事後変更届出
がそれぞれ別の手続として用意されています。
したがって、
変更があるからといって、すべて同じ変更届に該当するわけではありません。
対象設備の認定状態や変更内容を確認し、どの手続に該当するのかを判断する必要があります。
特に卒FIT設備については、まず認定状態が「認定中(調達期間終了)」となっているか確認することがポイントです。
事前変更届出(卒FIT)の基本的な流れ
実際の電子申請では、概ね次のような流れで進めます。
① 対象設備を確認する
再生可能エネルギー電子申請システムにログインし、認定設備一覧から対象となる設備を確認します。
② 認定状態を確認する
対象設備の詳細画面で、現在の認定状態を確認します。
事前変更届出(卒FIT)については、「認定中(調達期間終了)」となっている設備が対象です。
③ 「事前変更届出(卒FIT)」を選択する
対象設備の画面から「事前変更届出(卒FIT)」の手続へ進みます。
④ 変更内容を選択する
変更する内容を選択します。複数の変更内容を選択して手続することができる場合もあります。
⑤ 変更後の情報を入力する
事業者情報など、変更する項目について必要な情報を入力します。
⑥ 必要書類を確認・添付する
変更内容に応じて必要となる書類を確認し、電子申請に添付します。
行政書士等による代行申請の場合には、変更内容や申請方法に応じて委任状や事業者側の証明書類等が必要となる場合があります。
⑦ 内容を確認して提出する
入力内容と添付書類を確認したうえで提出します。
また、複数の変更手続を行う場合には注意が必要です。
複数の変更手続を同時に進めることができない場合があるため、
提出済みの手続が受理された後に次の手続へ進む必要があります。
変更が複数ある場合は、どの手続から行うかも実務上の確認ポイントになります。
行政書士へ相談する前に確認したいもの
卒FIT後の変更手続について相談する場合、次の資料・情報があると状況を整理しやすくなります。
- 設備ID等、設備を特定できる情報
- 認定関係の資料
- 現在の認定状態
- 現在登録されている事業者情報
- 買取期間の満了時期
- 変更したい内容
- 売買・相続・贈与など変更の原因
- 電力会社・売電先との契約資料
- 土地・建物に関する資料
- 過去の変更手続に関する資料
すべての資料が揃っていなくても、
まず手元にある資料から状況を整理することは可能です。
特に、「何の手続きをすればよいか分からない」という場合には、いきなり電子申請を始めるのではなく、
の順に整理すると分かりやすくなります。
よくある質問
- Q卒FITしたら経済産業省への変更手続はもう必要ありませんか?
- A
一律に不要とはいえません。
固定価格での買取期間が終了したことと、認定設備の登録情報に変更が生じた場合の手続は別に考える必要があります。
- Q事前変更届出(卒FIT)は、卒FITする前に提出する手続ですか?
- A
名称だけから、そのように判断しないよう注意が必要です。
現在の電子申請システムでは、認定状態が「認定中(調達期間終了)」となっている設備について、事前変更届出(卒FIT)の手続を行うことができます。
- Q卒FITしている設備なら、すべて事前変更届出(卒FIT)を利用できますか?
- A
一律にはいえません。
現在の電子申請システムでは、認定状態が「認定中(調達期間終了)」となっている設備が対象です。まず、対象設備の認定状態を確認する必要があります。
- Q卒FIT後に事業者が変わった場合も手続できますか?
- A
現在の認定状態や変更内容を確認する必要があります。
現在の電子申請システムでは、事業者情報も変更対象となっており、新たな事業者を登録する手続も用意されています。
- Q中古住宅を購入した後でも手続できますか?
- A
まず、現在の認定状態や登録情報、売買時期、手元にある資料などを確認することが重要です。
そのうえで、現在必要となる手続を整理します。可能であれば、太陽光付き中古住宅については引渡し後ではなく、売買を進めている段階でFIT・卒FIT関係の手続も確認しておくことをおすすめします。
- Q行政書士に事前変更届出(卒FIT)を依頼できますか?
- A
行政書士が取り扱うことのできる範囲で、申請・届出書類の作成や行政手続の支援を行うことができます。
案件によっては、まず認定状態や変更原因、必要書類を確認してから手続を判断します。
不動産登記、税務、法律紛争など他士業の独占業務については、それぞれの専門家との連携が必要です。
まとめ
卒FITとは、FIT制度による固定価格での買取期間が満了することです。
しかし、
「卒FITした=FIT制度上の変更手続もすべて終了した」とは限りません。
再生可能エネルギー電子申請システムでは、
認定状態が「認定中(調達期間終了)」となっている設備について、
「事前変更届出(卒FIT)」という手続が用意されています。
事前変更届出(卒FIT)では、事業者情報をはじめ、
発電設備に関する複数の項目が変更対象となっています。
そのため、
- 中古住宅の売買
- 相続
- 贈与
- 事業者情報の変更
- 設備に関する登録情報の変更
などがある場合には、
「卒FITしているから何もしなくてよい」と判断するのではなく、
まず現在の認定状態と登録内容を確認することが重要です。
当事務所でサポートできること
当事務所では、卒FITした太陽光発電設備について、
- 現在の認定状態の確認
- 現在の登録内容の整理
- 変更内容の確認
- 必要となる行政手続の整理
- 必要書類の確認
- 行政書士が取り扱うことのできる範囲での申請・届出手続の支援
を行っております。
特に、
といった場合には、現在の状況から必要な手続を整理することが重要です。
また、太陽光付き中古住宅を取り扱う住宅販売会社・不動産会社からのご相談についても、案件ごとにFIT・卒FIT関係の確認事項を整理することが可能です。
卒FIT後の変更手続についてお困りの場合は、お気軽にご相談ください。
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