FIT制度の太陽光発電所を売買するときの注意点とは?認定・契約・設備のDDチェックリストを解説

コラム

太陽光発電所を購入する際、

「利回りが高いから大丈夫だろう」
「売電収入が安定しているから安心だろう」

と考えていないでしょうか。

また、

  • 相続した太陽光発電所を売却したい
  • 投資目的で中古太陽光発電所を購入したい
  • 発電事業を譲渡したい
  • 法人成りや事業再編を検討している

という方もいるかもしれません。

しかし、FIT制度の太陽光発電所は単なる土地や設備ではありません。

発電所には、

  • FIT認定
  • 売電契約
  • 系統連系契約
  • 土地利用権
  • 廃棄費用積立

など、さまざまな権利関係や制度上の要件が関係しています。

そのため、売買契約締結後に、

「認定内容と現況が違っていた」
「必要な手続が行われていなかった」
「土地契約を引き継げなかった」

といった問題が発覚することもあります。

こうしたリスクを把握するために行われるのが、
DD(デューデリジェンス)です。

DDとは、発電所の状況やリスクを事前に確認するための調査のことをいいます。

この記事では、FIT制度の太陽光発電所を売買する際に確認しておきたいポイントと、実務上よく確認されるDDチェックリストについて解説します。

DD(デューデリジェンス)とは

DD(デューデリジェンス)とは、売買や投資を行う前に対象物件の状況やリスクを調査することをいいます。

不動産取引でも行われますが、太陽光発電所の場合は確認すべき事項がさらに多くなります。

なぜなら、発電所には設備だけでなく、

  • FIT認定
  • 土地利用権
  • 売電契約
  • 系統連系契約
  • 廃棄費用積立

などが存在するためです。

そのため、発電量や利回りだけでは発電所の価値を判断することはできません。

DDは、「この発電所を安心して取得できるか」を判断するための重要な確認作業です。

なぜ太陽光発電所の売買でDDが必要なのか

発電量や表面利回りだけで購入を判断すると、後から問題が発覚することがあります。

例えば、

  • 認定内容と現況が一致していなかった
  • 設備変更履歴が整理されていなかった
  • 土地利用権に問題があった
  • 必要な変更手続が行われていなかった
  • 売電契約の承継に確認が必要だった
  • 廃棄費用積立の状況が把握できていなかった

などです。

発電所の価値は設備だけで決まるわけではありません。

認定や契約関係も含めて確認することが重要です。

DDの目的は、発電所の価値を把握することだけではありません。
将来のリスクを把握し、安心して事業を引き継げる状態かを確認することにあります。

FIT制度では認定内容の維持も重要

FIT制度では、認定を受けた後も認定内容に沿って事業を継続することが求められています。

そのため、太陽光発電所を売買する際には、設備の状態や収益性だけでなく、認定内容と現況が一致しているかも確認することが重要です。

特に中古太陽光発電所の売買では、

  • 過去の設備変更
  • 事業者変更
  • 土地権利の変更

などが行われている場合があります。

売買後に問題が判明すると、想定外の手続や追加コストが発生することもあるため、事前確認が重要です。

DDで確認したい認定取消・失効リスク

FIT制度では、認定取得後も認定内容に従って事業を実施することが求められています。

そのため、発電所売買のDDでは、

「認定が存在しているか」

だけではなく、

「認定内容と現況が一致しているか」

を確認することが重要です。

確認したい主な事項

  • 認定内容と現況が一致しているか
  • 過去の設備変更履歴
  • 過去の事業者変更履歴
  • 土地権原が維持されているか
  • 標識やフェンスなどの管理状況
  • 認定取得後の手続漏れがないか

売買後に問題が発覚すると、修正に時間や費用を要することがあります。
そのため、契約締結前の確認が重要です。

FIT認定関係のチェック項目

まず確認したいのが認定情報です。

認定ID 認定内容を確認するための基本情報です。
設備ID設備を特定するための重要な情報です。
認定年月日認定時期によって制度や運用が異なる場合があります。
運転開始日設備の経過年数や調達期間の残存年数を把握するために確認します。
調達期間・交付期間残存期間は発電所の価値に大きく影響します。
変更履歴設備変更や事業者変更などの履歴を確認します。
変更履歴によって追加で確認すべき事項が生じることがあります。
事業計画との整合性FIT制度では、認定を受けた事業計画に基づいて発電事業を行うことが前提とされています。

そのため、

  • 設備構成
  • 設備出力
  • 設置状況

などについて、認定内容との整合性も確認しておきたいポイントです。

土地・権利関係のチェック項目

土地の状況も重要な確認事項です。

所有権売主が適切な権利を有しているか確認します。
賃借権賃借地の場合は、
・契約期間
・更新条件
・譲渡承諾の要否
などを確認します。
地上権等第三者の権利が設定されていないか確認します。
境界・越境土地利用上の問題がないか確認します。

設備関係のチェック項目

設備の状態も重要です。

太陽光パネル・メーカー
・型式
・設置状況
・破損状況 などを確認します。
パワコン(PCS)パワコン(PCS:パワーコンディショナ)は、太陽光パネルで発電した直流電気を交流電気へ変換する設備です。
発電所の運転に欠かせない設備であり、発電効率にも影響します。
確認事項としては、
・メーカー
・型式
・交換履歴
・故障履歴 などがあります。
フェンス・標識適切に維持されているか確認します。
メンテナンス状況保守点検記録や点検体制も確認しておきたい事項です。

廃棄費用積立のチェック項目

現在は廃棄費用積立制度も重要な確認事項です。

積立状況積立が適切に行われているか確認します。
積立方式外部積立なのか、源泉徴収的積立なのか確認します。
将来の負担将来的な撤去費用負担についても把握しておきたいところです。

契約関係のチェック項目

売電契約契約内容を確認します。
系統連系契約接続契約の状況を確認します。
土地契約賃貸借契約の内容を確認します。
O&M契約保守管理契約の有無や内容を確認します。

DDチェックリスト

売買前には次の項目を確認しておきたいところです。

確認項目確認内容
認定ID確認
設備ID確認
認定年月日確認
運転開始日確認
調達期間・交付期間確認
変更履歴確認
土地権利確認
売電契約確認
系統連系契約確認
設備状況確認
廃棄費用積立確認
担保設定の有無確認

行政書士が確認できる事項

行政書士は、

  • 認定関係資料
  • 変更履歴
  • 契約関係資料
  • 権利関係資料

などを整理し、必要手続やリスクの確認を支援することができます。

行政書士がDDで確認することが多い事項

  • 認定ID
  • 設備ID
  • 認定年月日
  • 変更履歴
  • 事業者変更履歴
  • 土地権原資料
  • 廃棄費用積立状況
  • 必要となる承継手続の有無
  • 変更内容ごとの変更手続整理表による確認

行政書士がサポートできる内容

  • 認定資料の確認
  • 変更履歴の整理
  • 必要書類の整理
  • 承継手続の確認
  • 関係契約書の整理
  • 認定事業者変更手続のサポート

他士業との連携が必要な事項

  • 所有権移転登記(司法書士)
  • 税務申告(税理士)
  • 境界や測量(土地家屋調査士)
  • 法的紛争対応(弁護士)

案件に応じて適切な専門家との連携が重要です。

よくあるトラブル

  • 認定内容と現況が一致しない
    設備変更後の整理が十分でないケースがあります。
  • 土地契約が引き継げない
    賃借地案件では特に注意が必要です。
  • パワコン交換履歴が不明
    設備管理状況の把握が困難になることがあります。
  • 廃棄費用積立の状況が不明
    売買後に想定外の問題となることがあります。

こんな場合は事前確認をおすすめします

次のようなケースでは、売買契約締結前に認定内容や変更履歴を確認しておくことをおすすめします。

  • 中古太陽光発電所を購入する場合
  • 相続した発電所を売却する場合
  • 発電事業の事業譲渡を検討している場合
  • 法人成りに伴い発電所を法人へ移転する予定がある場合
  • 設備変更履歴が十分に把握できていない場合
  • 認定取得から長期間が経過している発電所を取得する場合

契約締結後に問題が見つかると、追加費用や手続負担が発生することがあります。そのため、事前確認は重要です。

まとめ

FIT制度の太陽光発電所を売買する場合には、発電設備だけでなく、認定や契約関係も含めて確認することが重要です。

特に中古太陽光発電所では、過去の設備変更や事業者変更の履歴が売買後の手続に影響することがあります。

  • 土地
  • 設備
  • FIT認定
  • 契約関係
  • 廃棄費用積立

など、多くの項目を確認し、DDを通じてリスクを把握することが重要です。

特に認定内容と現況の整合性や変更履歴は、売買後のトラブルを防ぐためにも確認しておきたいポイントです。

また、売買によって認定事業者が変わる場合には、FIT制度上の取扱いも確認する必要があります。

名義変更については、「FIT制度の名義変更とは?相続・売買・法人成りの手続を解説」をご覧ください。

また、設備変更が行われている発電所を取得する場合には、「FIT認定後に設備を変更するときはどうする?パワコン交換・パネル交換と変更認定申請を解説」もあわせてご確認ください。

※本記事は令和8年(2026年)6月時点の制度をもとに作成しています。制度改正や運用変更が行われる可能性があるため、実際の案件では最新の資源エネルギー庁公表資料、FIT・FIP制度ガイドブック、変更内容ごとの変更手続整理表等をご確認ください。