FIT制度を利用して太陽光発電事業を行っている方の中には、
「廃棄費用積立制度とはどのような制度なのだろう?」
「毎月売電収入から積み立てられている費用は何に使われるの?」
「発電所を売却した場合、積立金はどうなるの?」
「撤去するときにはどのような手続が必要なの?」
といった疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか。
近年では、太陽光発電所の売買や相続、法人化などの相談が増えており、廃棄費用積立制度についてお問い合わせをいただく機会も多くなっています。
しかし、実際には制度の概要だけでなく、FIT認定の変更手続や発電所売買、撤去時の行政手続などが複雑に関係するため、「積立制度だけ」を理解していても十分とはいえません。
特に、発電所の売買では、積立金の状況だけでなく、FIT認定の内容や変更履歴まで確認することが重要になります。
この記事では、FIT制度の廃棄費用積立制度について、制度の目的から対象設備、積立方法まで、行政書士の実務経験を踏まえてわかりやすく解説します。
FIT制度の廃棄費用積立制度とは
廃棄費用積立制度とは、太陽光発電設備の運転終了後に必要となる撤去・解体・処分費用を、あらかじめ積み立てる制度です。
FIT制度が開始された2012年以降、日本全国で多くの事業用太陽光発電設備が設置されました。
一方で、将来、発電事業を終了した設備が放置されることや、十分な資金を確保しないまま撤去時期を迎えることが懸念されるようになりました。
そこで国は、発電設備の適切な撤去・処分を確保するため、一定の設備について廃棄等費用の積立てを義務付ける制度が導入されました。制度の目的は、設備の放置や不法投棄を防止し、再生可能エネルギー事業を長期的に適正なものとすることにあります。
なお、この制度は「撤去費用を国に納める制度」ではありません。
将来必要となる撤去費用を計画的に確保し、適切なタイミングで使用するための制度であることを理解しておきましょう。
なぜ廃棄費用積立制度が導入されたのか
太陽光発電設備の耐用年数は一般的に20年から30年程度とされています。
FIT制度では、売電収入をもとに事業を継続することになりますが、運転終了後には、
- 太陽光パネル
- 架台
- パワーコンディショナー
- 配線設備
などを撤去し、法令に従って適切に処分する必要があります。
しかし、FIT制度開始当初は、撤去費用を十分に積み立てていない事業者も少なくありませんでした。
その結果、
「事業終了後に設備が放置されるのではないか」
「将来、不法投棄が増えるのではないか」
という社会的な課題が指摘されるようになります。
さらに、太陽光パネルにはガラスやアルミニウムのほか、一部の製品には鉛やセレンなどが含まれることもあり、廃棄物処理法などの関係法令に従った適正処理が求められています。
こうした背景から、廃棄費用積立制度が創設され、現在では多くの事業用太陽光発電設備が制度の対象となっています。
対象となる設備
廃棄費用積立制度の対象となるのは、原則として10kW以上の事業用太陽光発電設備です。
もっとも、「10kW以上だから必ず同じ取扱い」というわけではありません。
実際には、
- FIT認定年度
- FIT認定かFIP認定か
- 設備の出力
- 認定内容
- 積立方法
などによって、制度の適用や手続が異なります。
そのため、ご自身の設備が制度の対象となるかどうかは、FIT認定情報を確認することが重要です。
行政書士のもとへ相談に来られる方の中にも、
「10kW以上だから対象ですよね」
と思われていたものの、認定年度や設備内容を確認すると、手続の進め方が異なるケースは少なくありません。
制度の対象設備かどうかを判断する際には、単に出力だけを見るのではなく、認定内容全体を確認する必要があります。
積立方法は2種類ある
廃棄費用積立制度には、「外部積立て」と「内部積立て」の2種類があります。
現在、多くの認定事業者が対象となっているのが「外部積立て」です。
外部積立てでは、売電収入の一部が毎月自動的に積み立てられる仕組みとなっており、事業者が自由に引き出して利用することはできません。
そのため、
「以前より売電収入が少なくなった」
と感じる場合、その理由の一つとして廃棄費用積立制度による積立てが影響していることがあります。
一方、一定の要件を満たす事業者については、自ら積立金を管理する「内部積立て」が認められる場合があります。
ただし、内部積立ては希望すれば誰でも利用できる制度ではありません。
財務状況や積立計画、管理体制などについて国が定める基準を満たす必要があり、継続的な管理も求められます。
行政書士が実務で確認するポイント
廃棄費用積立制度について相談を受けた際、行政書士は単に積立制度だけを確認するわけではありません。
実務では、FIT認定全体の状況を確認したうえで、積立制度との関係を整理します。
例えば、当事務所では次のような事項を確認しています。
- FIT認定ID・設備ID
- 認定年度
- 認定事業者
- 設備所在地
- 外部積立てか内部積立てか
- 積立状況
- 過去の変更認定・届出履歴
- 定期報告の状況
- 発電所売買や相続の予定があるか
一見すると廃棄費用積立制度とは関係がないように思える項目もありますが、実際には認定内容や変更履歴によって必要となる手続が変わることがあります。
例えば、発電所を売買する予定がある場合には、積立制度だけでなく、FIT認定の事業者変更や変更認定の要否についても確認しなければなりません。
行政書士は、このように制度全体を見渡しながら必要な手続を整理する役割を担います。
積立金の取戻し手続
積立金は、必要になったときに自由に引き出せるものではありません。
一定の要件を満たし、制度に基づく手続を行った場合に限り、積立金の取戻しが認められます。
代表的な例としては、
- 発電設備を撤去する場合
- 解体工事を実施する場合
- 廃棄等費用を支払う必要がある場合
などが挙げられます。
手続では、
- 工事契約書
- 見積書
- 撤去計画
- 設備情報
- その他制度で求められる資料
などが必要になる場合があります。
必要書類や提出方法は設備の状況によって異なることがあるため、事前に制度内容を確認したうえで準備することが大切です。
発電所売買では積立制度の確認が重要です
近年はFIT認定を受けた太陽光発電所の売買が活発になっています。
しかし、売買契約を締結した後になって、
「積立状況を確認していなかった」
というケースも少なくありません。
発電所売買では、
- 積立金が適切に積み立てられているか
- 積立不足はないか
- 内部積立ての承認を受けている設備ではないか
- 売買後に必要な変更認定はあるか
などをデューデリジェンス(DD)の段階で確認することが重要です。
積立制度だけを確認して安心するのではなく、FIT認定全体を確認することで、売買後のトラブルを防ぎやすくなります。
実務でよくある相談
実際の相談では、制度そのものよりも「手続」に関するご相談が多く寄せられます。
例えば、
「発電所を購入した後に積立不足が判明しました。」
売買契約後に積立不足が判明すると、売主・買主のどちらが負担するのかという問題になることがあります。
そのため、売買契約前に積立状況を確認することが重要です。
「法人化した場合も積立制度は変わりますか。」
法人化に伴って認定事業者が変更となる場合には、FIT認定の変更手続が必要になることがあります。
積立制度だけではなく、認定全体への影響も確認する必要があります。
「相続した発電所でも積立制度は引き継がれますか。」
相続では、認定事業者の変更手続などが必要になる場合があります。
設備の状況によって必要な手続が異なるため、早めに確認することをおすすめします。
行政書士へ相談するメリット
FIT制度では、廃棄費用積立制度だけで完結する案件は多くありません。
実際には、
- FIT認定の変更認定
- 事業者変更
- 名義変更
- 定期報告
- 発電所売買
- 相続
- 法人化
など、複数の制度が関係します。
一つの手続だけを進めた結果、別の手続が漏れてしまうこともあります。
行政書士へ相談することで、制度全体を確認しながら必要な手続を整理できるため、手続漏れや認定内容との不整合を防ぐことにつながります。
特に発電所売買や相続など、一度の判断が今後の事業に大きく影響する案件では、早い段階で専門家へ相談することをおすすめします。
よくある質問
- Q積立金は自由に使えますか?
- A
いいえ。
積立金は将来の撤去・廃棄費用として確保されているため、自由に使用することはできません。
- Q売電を続けている間は何もしなくてもよいですか?
- A
積立制度の内容だけでなく、定期報告や認定情報の変更など、認定事業者として必要な手続を適切に行うことが重要です。
- Q発電所を売却する予定ですが、積立制度も確認した方がよいですか?
- A
はい。
積立状況はデューデリジェンスの重要な確認事項の一つです。
契約締結後ではなく、契約前に確認しておくことをおすすめします。
事前に確認したいチェックポイント
廃棄費用積立制度について確認する際には、次の事項を整理しておくと手続がスムーズになります。
事前に整理しておくことで、変更手続や積立金の取戻し手続を円滑に進めることができます。
まとめ
FIT制度の廃棄費用積立制度は、太陽光発電設備の適切な撤去・処分を確保するために設けられた重要な制度です。
一方で、実務では積立制度だけを確認すればよいわけではありません。
発電所売買、相続、法人化などでは、FIT認定の変更手続や認定内容の確認も必要になるため、制度全体を理解したうえで手続を進めることが大切です。
当事務所では、FIT・FIP制度に関する変更認定申請、事業者変更、相続、法人化、発電所売買に伴うデューデリジェンス(DD)など、行政書士として対応可能な手続をサポートしております。
「自分の設備ではどのような手続が必要なのかわからない」「売買前に確認しておきたい」とお考えの方は、お気軽にご相談ください。
この記事で解説した内容
※本記事は令和8年7月時点の法令、ガイドライン等をもとに作成しています。制度改正や運用変更が行われる場合がありますので、実際の手続にあたっては最新の公表情報をご確認ください。


