運送会社を始めようと考えたとき、
「会社を設立したら申請すればよい。」
「営業所と車庫を確保すれば開業できる。」
そのように考えられる方は少なくありません。
実際に当事務所へご相談いただく際も、
「営業所は契約しました。」
「車庫も決まっています。」
「車両も購入予定です。」
「申請をお願いします。」
という状況でお越しになるケースがあります。
もちろん、そのまま許可申請へ進められることもあります。
しかし、当事務所では、この段階で申請書の作成を始めることはありません。
最初に確認するのは、
「この事業計画で一般貨物自動車運送事業許可を取得できるか。」
という点です。
実は、一般貨物自動車運送事業許可の可否は、
申請書を作成する段階ではなく、
その前の準備段階で決まることも少なくありません。
一般貨物自動車運送事業許可とは
一般貨物自動車運送事業とは、荷主から運賃を受け取り、事業用自動車を使用して他人の貨物を運送する事業です。
一般的には「緑ナンバー」と呼ばれています。
建設資材や食品、日用品、機械設備など、私たちの生活や経済を支える物流の多くは、この一般貨物自動車運送事業によって担われています。
一方、自社の商品や資材を自社のためだけに運搬する場合は、この許可は必要ありません。
また、軽自動車による貨物運送では適用される制度が異なるため、まずは予定している事業内容にどの制度が必要となるのかを確認することが重要です。
申請前の準備が重要な理由
「運送業許可を取得したいので、必要書類を教えてください。」
ご相談では、このようなお問い合わせをいただくことがあります。
もちろん、許可申請には多くの書類が必要です。
しかし、当事務所では、最初に必要書類をご案内することはありません。
まず確認するのは、事業計画全体です。
具体的には、
などを確認します。
例えば営業所については、所在地だけで判断するのではなく、建築確認上の用途や都市計画法との関係、市街化調整区域に該当しないかなどを確認します。
車庫についても、土地の広さだけを見るのではなく、計画している車両を安全に収容できるか、前面道路を含めて支障なく出入りできるかを確認します。
また、自己資金についても、資金額だけではなく、審査基準に沿った方法で証明できる状態かどうかを確認します。
実際のご相談では、「営業所は問題ありませんが、車庫は再検討した方がよいでしょう。」あるいは、「営業所や車庫に問題はありませんが、自己資金の確認方法を見直しましょう。」とご案内することもあります。
このような確認は、契約後よりも契約前の方が対応できる選択肢が広く、結果として許可取得までの時間や余分な費用を抑えられるケースも少なくありません。
そのため当事務所では、一般貨物自動車運送事業許可は、
「申請書を作成すること」から始まるのではなく、「許可を取得できる事業計画になっているかを確認すること」から始まるものと考えています。
営業所は「借りられる=使える」ではありません
営業所は、運送会社の事業の拠点となる重要な施設です。
ご相談では、「事務所として募集されている物件なので、そのまま営業所として使えると思っていました。」
というお話を伺うことがあります。
しかし、一般貨物自動車運送事業許可では、
「事務所として借りられる建物」であることと、
「営業所として使用できる建物」であることは同じではありません。
営業所については、契約する前に確認しておきたいポイントがあります。
例えば、
などです。
特に、市街化調整区域では都市計画法上の制限があるため、営業所として利用できる建物を確保することは困難です。
実際には、営業所を契約した後にご相談いただくケースも少なくありません。
その場合でも許可取得を目指すことは可能ですが、
営業所の変更が必要となれば、時間や費用が余分にかかることがあります。
一方、契約前であれば、候補地を比較しながら検討することができます。
営業所は、「借りられる物件か」ではなく、
「一般貨物自動車運送事業許可の営業所として使用できる物件か」
という視点で確認することが大切です。
「広い土地だから大丈夫」とは限りません
営業所と並んで重要なのが車庫です。
ご相談では、「土地は十分に広いので問題ないと思います。」というお話をいただくことがあります。
しかし、車庫は面積だけで判断できるものではありません。
例えば、
などを確認します。
実際には、「十分な広さがある」と思われていた土地でも、
配置図を作成すると車両が計画どおりに収まらなかったり、
切り返しが必要になったりするケースがあります。
また、現在の計画だけでなく、
将来的な増車も見据えて車庫を選定しておくことが重要です。
なお、市街化調整区域については、営業所と車庫では考え方が異なります。
車庫は更地を利用する場合もあるため、
土地の状況や関係法令との適合性を確認したうえで判断する必要があります。
営業所と同様に、車庫についても契約前に確認しておくことで、
事業計画の見直しを避けられる可能性があります。
自己資金があるだけでは足りません
営業所や車庫の準備が整っていても、
それだけで許可を取得できるわけではありません。
自己資金や人的体制についても、許可基準を満たしていることが必要です。
「自己資金は準備しています。」
というご相談もありますが、
一般貨物自動車運送事業許可では、資金があることだけではなく、
審査基準に沿って証明できる状態であることが求められます。
また、
- 運行管理者
- 整備管理者
- 運転者
など、
事業開始後も継続して事業を運営できる体制を整えておく必要があります。
実際には、営業所や車庫には問題がなくても、
自己資金の確認方法や人的体制の準備状況から、
申請時期を見直した方がよいケースもあります。
一般貨物自動車運送事業許可では、
一つひとつの要件だけを見るのではなく、
事業計画全体が整っていることが重要です。
許可申請の前ではなく、契約前にご相談ください
「いつ相談すればよいですか。」
このご質問は、多くの方からいただきます。
おすすめしているのは、
営業所や車庫の候補地が決まった段階でのご相談です。
契約前であれば、
「この営業所であれば許可取得を目指せそうです。」
「こちらの車庫の方が事業計画に適しています。」
といったご提案ができる場合があります。
一方、契約後では、営業所や車庫の変更が必要になることもあります。
もちろん、契約後からでも許可取得を目指すことは可能です。
しかし、準備段階で確認しておくことで、
結果として時間や費用を抑えられるケースは少なくありません。
よくある質問
- Q会社設立前でも相談できますか?
- A
もちろん可能です。
会社設立前からご相談いただくことで、法人設立から許可取得までを見据えた事業計画をご提案できます。
- Q営業所は自宅でも大丈夫ですか?
- A
建物の状況や事業計画によって異なります。営業所として継続して使用できることや、関係法令への適合性などを確認したうえで判断する必要があります。
- Q市街化調整区域でも営業所や車庫にできますか?
- A
営業所については、市街化調整区域では営業所として利用できる建物を確保することは困難です。一方、車庫については更地を利用する場合もあるため、営業所とは異なる観点から検討する必要があります。
いずれの場合も、契約前に確認しておくことをおすすめします。
- Q営業所や車庫を契約した後でも相談できますか?
- A
もちろん可能です。
ただし、契約前であれば、より多くの選択肢の中から事業計画をご検討いただける場合があります。
まとめ
一般貨物自動車運送事業許可は、申請書類を作成することから始まる許認可ではありません。営業所、車庫、自己資金、人的体制など、事業計画全体を整えることが許可取得への第一歩です。
特に営業所や車庫は、一度契約すると変更が容易ではありません。
そのため、契約前に確認しておくことが、結果として時間や費用の負担を抑えることにつながります。
運送業許可は、営業所や車庫を探し始めたときから始まっています。
これから運送会社の設立をご検討の方は、営業所や車庫の契約前に一度ご相談ください。
準備段階から事業計画を確認することで、許可取得までを見据えたご提案が可能になります。



