太陽光発電設備が付いた中古住宅を売買するとき、
と迷うことがあります。
太陽光付き中古住宅では、土地・建物の売買だけでなく、太陽光発電設備とFIT・卒FITに関する情報も確認しておくことが重要です。
特に注意したいのは、
住宅の所有者が買主に変わったからといって、FIT制度上の事業者情報や売電契約まで自動的に変更されるわけではない
という点です。
また、卒FIT済みの設備でも、現在の認定状態や登録情報によっては、所有者の変更に伴う手続を確認する必要があります。
この記事では、太陽光付き中古住宅を売買するときに、売主から優先して引き継いでおきたい書類・情報、書類が見つからない場合の対応、引渡し前の確認ポイントを行政書士の視点から解説します。
太陽光付き中古住宅では「住宅」と「太陽光」を分けて確認する
太陽光付き中古住宅の売買では、「住宅の名義が変われば、太陽光についてもすべて引き継がれる」とは考えないことが重要です。
土地・建物については、売買契約、決済、所有権移転登記などが行われます。
一方、太陽光発電設備については、別に、
を確認する必要があります。
したがって実務では、
① 土地・建物
② 太陽光発電設備
③ FIT・卒FITの認定関係
④ 売電・電力会社との契約
の4つに分けて確認すると整理しやすくなります。
まず売主から確認・引き継ぎたい書類と情報
太陽光付き中古住宅だからといって、すべての案件で同じ書類が必要になるわけではありません。
そこで、まずは売買後のFIT・卒FIT関係の確認に重要なものから整理します。
① 設備ID
最初に確認したいのが設備IDです。
設備IDは、対象となる太陽光発電設備を特定するための重要な情報です。
認定関係の書類、売電関係の資料などに記載されていないか確認します。
設備IDが分かれば、対象設備の認定関係を確認する際の大きな手掛かりになります。
なお、設備IDが分からない場合でも、再生可能エネルギー電子申請システムには、認定中の事業者名と発電設備の設置場所から設備IDを照会する仕組みがあります。入力内容は登録内容と一致する必要があります。
したがって、「設備IDが分からない=何もできない」とすぐに判断する必要はありません。
② FIT認定に関する書類
次に確認したいのが、FIT制度上の認定に関する資料です。
例えば、
などです。
古い住宅用太陽光では、設置から10年以上経過し、売主自身も書類の存在を覚えていない場合があります。
そのため、売主に単に、「FITの書類はありますか?」と聞くだけでなく、
「太陽光を設置したときや、その後に国の認定について届いた書類は残っていますか?」と確認すると探してもらいやすいでしょう。
③ 現在の認定事業者が分かる情報
設備IDと併せて確認したいのが、現在、誰が認定事業者として登録されているのかという点です。
中古住宅では、「売主が認定事業者だと思っていた」ところ、確認すると過去の所有者等の情報が残っているということも考えられます。
住宅の所有者とFIT制度上の認定事業者が一致しているとは限らないため、売買に伴う手続を判断する前に現在の登録状態を確認します。
④ FIT期間中か、卒FIT済みかが分かる資料
住宅用太陽光では、現在もFITによる買取期間中なのか、すでに買取期間が満了しているのかも重要です。
売主から、
などが残っていないか確認します。
再生可能エネルギー電子申請の案内でも、買取期間満了対象者には各電力会社から満了前に案内が送付され、その資料に設備IDが記載されている場合があるとされています。
したがって、卒FIT関係の案内も捨てずに確認する価値があります。
⑤ 売電契約に関する書類
現在売電している場合には、
などを確認します。
ここで重要なのは、FIT制度上の認定に関する手続と、売電先との契約手続は同じものではないという点です。
FIT制度上の事業者変更を行ったからといって、売電契約の名義まで当然に変更されるわけではありません。
逆に、電力会社側の名義変更だけを行って、FIT制度上の登録情報の確認が漏れることも避けたいところです。
あれば一緒に引き継いでおきたい太陽光設備の資料
次の資料については、FITの事業者変更のためにすべて必須という意味ではありません。
しかし、中古住宅として太陽光設備を引き継ぐのであれば、残っているものはできるだけ受け取っておくことをおすすめします。
例えば、
- 太陽光パネルのメーカー・型式が分かる資料
- パワーコンディショナのメーカー・型式が分かる資料
- 設置工事時の図面
- 保証書
- 取扱説明書
- 工事関係資料
- 点検記録
- 修理記録
- パネル・パワコン等の交換履歴
などです。
特に確認したいのが、過去にパネルやパワコンを交換していないかです。
設備変更の内容によってはFIT制度上の変更手続との関係を確認する必要があるためです。
再生可能エネルギー電子申請でも、認定後の設備情報を変更する場合は「変更内容ごとの変更手続の整理表」で必要な手続を確認するよう案内されています。
したがって、「今付いている設備」と「認定されている設備情報」に食い違いがないかという視点も、中古住宅の引継ぎでは重要です。
「事業者」と「登録者」は分けて確認する
太陽光付き中古住宅の案件では、もう一つ注意したい点があります。
それが、「認定事業者」と「電子申請上の登録者」を混同しないことです。
再生可能エネルギー電子申請では、設備を持つ事業者側のIDと、代行事業者・工務店等が使用する登録者側のIDが区別されています。
例えば、太陽光を設置した当時、
- ハウスメーカー
- 工務店
- 太陽光施工会社
- 申請代行業者
などが申請に関与していることがあります。
そのため、「売主が電子申請のログイン情報を持っていない」からといって、直ちに認定自体に問題があるとは限りません。
まず、
を整理することが重要です。
FIT期間中の住宅を売買する場合
FIT期間中に太陽光付き中古住宅を売買し、認定事業者が売主から買主へ変わる場合には、FIT制度上の事業者変更について確認します。
ここで押さえておきたいのは、住宅の所有権移転登記と、FIT制度上の事業者変更は、別の手続ということです。
住宅について、売買契約→決済→所有権移転登記が完了しても、それだけで再生可能エネルギー電子申請上の事業者情報まで自動的に買主へ変更されるわけではありません。
どの変更手続が必要になるかは、設備区分、現在の認定状態、変更内容などを確認して判断します。
なお、50kW未満の太陽光の認定申請に関する窓口については、再生可能エネルギー電子申請サイトでJPEA代行申請センターと案内されています。
卒FITしていたら認定関係の書類はもう不要?
卒FIT済みだからといって、認定関係の資料を引き継がなくてよいとは考えない方がよいでしょう。
卒FITとは、FIT制度による固定価格での買取期間が満了することです。
太陽光発電設備そのものがなくなるわけではありません。
また、現在の再生可能エネルギー電子申請では、認定状態が「認定中(調達期間終了)」となっている設備について、「事前変更届出(卒FIT)」の手続が用意され、事業者情報を変更する場合の操作も定められています。
したがって卒FIT済みでも、
- 設備ID
- 認定関係資料
- 現在の事業者情報
- 売電関係資料
などは、できるだけ売主から引き継いでおくことをおすすめします。
「卒FIT=FIT関係の資料は全部不要」ではありません。
売主が「書類は何も残っていない」と言ったら?
中古住宅では十分あり得ます。
例えば、
というケースです。
この場合も、書類がないことだけで手続不能と判断しないことが重要です。
まず、
を順番に確認します。
設備IDについては、認定中の事業者名と設置場所を利用した照会ページがあります。
また、ログインID・パスワードについても照会手続が用意されており、設備IDや登録メールアドレス等を使って確認できる場合があります。これらで解決できない場合の問い合わせ方法も案内されています。
したがって、「売主がID・パスワードを知らないから手続できない」と即断する必要はありません。
ID・パスワードそのものを引き継げばよい?
中古住宅の売買だからといって、「売主のログインID・パスワードを買主がそのまま使えばよい」と考えるのは適切ではありません。
重要なのはパスワードそのものを受け取ることではなく、
- 対象設備を特定する
- 認定事業者を確認する
- 登録者を確認する
- 必要な変更手続を行う
ことです。
再生可能エネルギー電子申請には、認定設備について設備の登録者変更の手続も用意されています。
したがって、「ログインできる状態にすること」と「FIT制度上必要な変更手続を完了すること」は別と考えましょう。
住宅販売会社・不動産会社なら「引渡し時」ではなく「売買前」に確認
太陽光付き中古住宅では、引渡し後になってから、
と分かると、売主・買主双方との調整が必要になることがあります。
そのため、住宅販売会社や不動産会社が太陽光付き中古住宅を取り扱う場合は、引渡し時の書類チェックではなく、できれば売買を進める段階で確認を始めることをおすすめします。
売主への最初の確認としては、「太陽光発電設備について、設置時の認定書類、設備IDが分かる資料、売電関係の書類は残っていますか?」という聞き方で十分です。
そこから資料を確認し、不足している情報を洗い出します。
【実務用】売主からの引継ぎチェックリスト
住宅販売会社・不動産会社で使用する場合は、次のように優先度を分けて確認すると使いやすくなります。
このチェックリストを売買の早い段階で使えば、「引渡し後になって太陽光関係の資料不足が判明する」リスクを減らすことができます。
よくある質問
- Q太陽光付き中古住宅を購入すれば、FITの名義も自動的に買主へ変わりますか?
- A
いいえ、自動的には変わりません。
土地・建物の所有権移転と、FIT制度上の認定事業者に関する変更は別に確認する必要があります。
現在の認定状態、事業者情報、売買内容などを確認したうえで必要な手続を判断します。
- Q売主から絶対に認定通知書を受け取らなければなりませんか?
- A
古い設備では、認定関係書類が残っていない場合もあります。
その場合でも、設備ID、売電資料、現在の登録情報などから状況を確認できる場合があります。
したがって、「認定通知書がない=手続できない」とは限りません。
- Q設備IDが分からなくても調べられますか?
- A
認定中の設備については、再生可能エネルギー電子申請システムに、認定中の事業者名と発電設備の設置場所を利用した設備ID照会が用意されています。
ただし、入力情報は登録されている内容と一致する必要があります。
- Q卒FIT済みでも設備IDを確認した方がよいですか?
- A
はい。確認しておくことをおすすめします。
卒FIT後でも現在の認定状態によっては、事前変更届出(卒FIT)などの手続を確認する必要があるためです。
- Q売電契約の名義変更とFITの名義変更は同じですか?
- A
同じ手続ではありません。
FIT制度上の認定に関する手続と、売電先との契約手続は分けて確認する必要があります。
- Q売主が電子申請のID・パスワードを忘れていたらどうしますか?
- A
再生可能エネルギー電子申請には、ログインID・パスワードの照会・再発行に関する手続があります。設備IDや登録メールアドレスなど、現在分かっている情報から対応方法を確認します。
- Q住宅販売会社から行政書士へ確認を依頼できますか?
- A
行政書士が取り扱うことのできる範囲で、
- 認定状況・登録内容の整理
- 売主から取得したい資料の整理
- FIT・卒FIT関係の必要手続の確認
- 必要書類の整理
- 申請・届出書類の作成や手続支援
などを行うことができます。
不動産登記については司法書士、税務については税理士、紛争性のある法律問題については弁護士など、他士業の専門領域については必要に応じた連携が必要です。
まとめ|太陽光の書類は「引渡し後」ではなく「売買前」に確認する
太陽光付き中古住宅を売買するときは、土地・建物の書類だけでなく、太陽光発電設備とFIT・卒FITに関する情報も引き継ぐことが重要です。
特に優先して確認したいのは、
です。
そして、住宅の所有権移転=FIT制度上の事業者変更=売電契約の名義変更ではありません。
それぞれ分けて確認する必要があります。また、書類や設備IDが見つからなくても、照会等によって確認できる場合があります。
重要なのは、「資料があるか」だけを確認するのではなく、「現在どのような認定・登録状態になっているのか」まで確認することです。
特に住宅販売会社・不動産会社が太陽光付き中古住宅を取り扱う場合には、引渡し直前ではなく、売買の早い段階で太陽光関係の確認を始めることをおすすめします。
太陽光付き中古住宅のFIT・卒FIT手続をサポートします
当事務所では、太陽光付き中古住宅の売買に伴うFIT・卒FIT関係について、
- 売主から引き継ぐ資料の整理
- 設備・認定状況の確認
- 現在の登録内容の整理
- FIT・卒FITの確認
- 事業者変更等の必要手続の整理
- 必要書類の確認
- 行政書士が取り扱うことのできる範囲での申請・届出支援
を行っています。
といった場合には、現在分かっている情報から必要な確認事項を整理することができます。
また、太陽光付き中古住宅を継続的に取り扱う住宅販売会社・不動産会社からのご相談にも対応しています。
案件ごとにFIT・卒FITの状況を確認し、引渡しまでに確認しておきたい事項を整理することで、担当者の負担軽減にもつながります。
太陽光付き中古住宅のFIT・卒FIT手続でお困りの場合は、お気軽にご相談ください。



